「核形成」は溶液中に分散している溶質分子が集まり、数ナノメートル程度の大きさのクラスター(集団)を作る段階である。微小な領域での濃度の増加が起こり、クラスターが十分に安定な条件が整うと、この段階が始まる。出来上がったクラスターは結晶の核となるが、不安定な場合は解離してしまう。安定な核となるためにはある程度の大きさを超えなければならないが、その大きさは溶液が置かれている条件(温度、
過飽和、不純物など)によって決まる。原子が規則的・周期的に配列し、
結晶構造が決定されるのもこの段階である。ここでいう「結晶構造」とは原子の配置の様式を意味する語であり、出来上がる結晶の塊の大きさや形のことではない。
次の段階、「結晶成長」では出来上がった核が成長する。過飽和状態が続く限り、核形成と結晶成長は進行し続ける。過飽和は結晶化の駆動力であるため、核形成と結晶成長の速さは溶液の過飽和度が高いほど加速される。条件によっては核形成と結晶成長のうちのいずれかが支配的になるため、結果として大きさや形の異なる結晶が得られる。医薬品などの工業的な製造過程においては、結晶の大きさ・形状のコントロールが重要な課題の1つである。過飽和状態が終わると溶液は固?液平衡に達し、結晶化は完了する。条件が変化して平衡が破れ、溶液が過飽和状態になれば、再び結晶化が始まる。
結晶化が起こるためには、溶液は過飽和していなければならない。すなわち、平衡状態における濃度よりも多くの溶質(分子または
イオン)を含んでいる必要がある。そのような状態を起こす一般的な方法として (1) 溶液を冷却する、(2) 溶質の溶解度を減少させるような新たな溶媒を加える(この技法は貧溶媒添加晶析として知られる)、(3) 化学反応を起こす、(4)
pHを変化させる、などが知られている。溶媒をゆっくりと蒸発させる、といった方法もとられる。