私法においては、真の権利者が保護されることは当然である(静的安全)。しかし、取引の相手方が真の権利者であるかを完璧に調べなければならないとなると私的経済活動が停滞してしまう。そこで、一定の場合には、真の権利者よりも取引の相手方を保護する必要がある(動的安全、
取引の安全)。権利外観理論は、真の権利者が真の権利関係とは異なる虚偽の外観を作り出したなど責任を問われても仕方がないような場合に、そのことを知らなかった(法律上「
善意」という)第三者を保護するために、虚偽の外観どおりの権利関係を認めるものである。
例えば、AがBを代理人に選任してはいないのに、第三者Cに「Bが私(A)の代理人だ」と紹介した場合、BがAの代理人としてCと契約を行ったら、Aは契約どおりの責任をCに対して負うような場合がある。
民法上も権利外観理論の規定はあるが、取引行為が日常的に頻繁に行われる
商人間の法律関係を規律する
商法に規定が多い。これは民法の予定する法律関係においては
意思主義的な要請が強いが、商法の予定する法律関係においては
表示主義的な要請が強いためである。