妊娠 wikipedia|無料辞書
妊娠(にんしん)とは、
哺乳類などの
胎生の動物で、雌の胎内(子宮内)における、
受精卵の着床から出産、もしくは
流産するまでの経過、およびその状態を指す。
◆ 概要
哺乳類一般では、妊娠の経過は、それぞれの種によって異なる。満期出産に至るまでの期間や出産時の成熟度もまちまちである。
一般に、草食獣は、生後まもなく走れるほどに成熟して生まれることが多いが、外敵の少ない肉食獣では、しばしば目も開かない状態で生まれてくる。また
有袋類は、大変小さく未熟な状態で生まれ、母親の袋(育児のう)内で成長する。
出産する子の数では、
ネズミのように多産のものから、
ゾウや
ゴリラのように、ほぼ1頭のみ出産するものまである。これは、母体への負担と生後の生存率に関係していると考えられる。
人間の場合、受精後平均266日、腹の子(胎児)が約3,000g内外にまで育ったところで出産に至る。
妊娠中の女性は「妊婦」、分娩直前の女性は「産婦」、分娩後は「褥婦」、女性の胎内にいる子どもは「
胎児」、生後4週間までの子どもは「
新生児」と呼ばれる。
これ以降は人間の場合について述べる。
◆ 受胎
◇ 排卵
女性は胎児期から、
卵巣の中に
原始卵胞を持っている。平均して12〜13歳で
初経が起こり(当初は無排卵月経であることが多い)、その約1〜2年後から、原始卵胞は毎周期いくつか発達を始め、そのうち成熟の最終段階に至った1個が卵巣から排出されるようになる。この成熟
卵子の排出を「
排卵」という。排卵された卵子は
卵管の先端(膨大部)に拾われる。
毎期の月経開始とともに、卵巣内では次の排卵に向けた卵胞の発育が始まり、一方の
子宮では月経終了後に再び
着床のための
子宮内膜を用意して排卵を待つ。個人差はあるが、一般に28日前後を1周期として、排卵が起こる。(⇒
卵胞形成)
◇ 受精
排出された卵子に精子が到達して卵管膨大部で「
受精」が起こる。受精した卵を「
受精卵」と呼ぶ。卵子は一旦受精すると、それ以外の精子は受け付けない。
; 多胎妊娠:稀に、一卵性双胎、二卵性双胎が生まれる(⇒
双生児)。現在は体外授精などの不妊治療により、三つ子(三胎)、四つ子(四胎)が生まれることもある(⇒
多胎児)。Hellinの法則によるとn胎の発生する確率は89のn-1乗に1例である
[Louis G. Keith, Isaac Blickstein, Jaroslaw J. Oleszczuk, Donald M. Keith (2002). Triplet Pregnancies and Their Consequences Informa Health Care.]
ISBN 1842141244 p.10 Hellin opined that twins occur once in 89 birth, triplets once in 892, and quadruplets once in 893.。多胎妊娠は妊娠経過中に多々の合併症を生じることも多く、出生予後も単胎に比べると良くない。そのため体外受精の時に子宮内に戻される受精卵の数は3個までと日本産科婦人科学会によって会告で通達されている。
排卵後に受精しなかった卵子は約24時間で寿命が尽きてやがて消滅し、妊娠準備のために肥大していた子宮内膜は排卵から14日前後に経血として体外へ排出される(⇒「
月経」)。
妊娠可能時期
子宮
排卵後の
卵胞は「
黄体」となり、「黄体ホルモン(
プロゲステロン)」を分泌する。「黄体ホルモン」は
子宮を着床に適した状態に整える。この黄体の寿命は妊娠成立しなければ排卵から約14日前後で、黄体ホルモンの分泌が終わり子宮内膜を保持できなくなると月経が起こる。
◇ 着床
受精卵はゆっくりと細胞分裂を繰り返しながら卵管を下り、およそ48時間かけて子宮にたどり着く。そして、子宮内膜の一箇所に取り付いて着床の過程を開始し、徐々に潜り込んでいって根を下ろし、排卵から7〜11日後に着床状態が完成する。この
着床をもって妊娠成立とみなす。着床した受精卵からは、
胎盤が形成され始める(なお、胎盤は
妊娠中期に入る頃までに徐々に完成する)。
すべての受精卵が着床に成功するわけではなく、
染色体に異常がある受精卵など一定の割合は淘汰される。受精卵が着床しなければ妊娠は不成立で、排卵から12〜16日後に月経が起こる。(cf.
緊急避妊)
子宮外妊娠
受精卵が何らかの理由で卵管など子宮以外の場所に着床した場合は
子宮外妊娠と呼ばれ、放置すると危険な状態になる。
産婦人科での緊急な処置が必要となる。
妊娠判定
着床した受精卵の初期胎盤から分泌される
hCGという特有のホルモン(これが黄体の寿命を延ばして子宮に着床状態を維持させる)の検出により、女性の尿が少量あれば妊娠の有無は簡単に判定できる。
判定薬は薬局で求めることができるが、より確実を期するためには医療機関を受診する。
妊娠期間の数え方
受精後胎齢と月経後胎齢の二つの数え方がある。前者は
発生学で用いられ、後者は
臨床産科で用いられる。
; 受精後胎齢:受精初日を1日目として、満日数、満週数であらわす。
; 月経後胎齢:最終月経初日を1日目として、満日数または満週数で表す。
両者の関係は「受精後胎齢 = 月経後胎齢 - 2週」で表せる。
日本やアメリカでは一般に最終月経の第一日目を妊娠0週0日とする月経後胎齢で妊娠期間を計り、40週0日を標準的な妊娠期間として出産予定日を導出している。ただし最終月経を起点とするこの数え方では、同じ週数でも各人の月経周期の長さ(最終月経から排卵までに要す日数)によって妊娠の経過にばらつきが出る可能性があるため、現代の医学の下では
妊婦健診における胎児の発育度合いから逆算しておよそ受精日=2週0日となるように微修正を加えることも多い。産科学では4週(28日)を1ヶ月と扱い、最終月経から母体を「1ヶ月」「2ヶ月」と数えでの月数で表現する(満でないことに注意。すなわち妊娠0ヶ月は存在せず最終月経開始日はすでに妊娠1ヶ月であり、月経予定日(4週0日相当)を過ぎても次の月経が来ないことに気づき検査を行った時点で妊娠2ヶ月である)。
なお、
フランスでは臨床産科においても受精後胎齢が使われており、推定された受精日から何週、または何ヶ月たったかで妊娠期間を表している。
日本でもかつては月経後胎齢を用いて、受胎から出産までを俗に「十月十日(とつきとおか)」と言い習わしてきた。