テレマークスキー wikipedia|無料辞書
テレマークスキー (Telemark ski) は、19世紀後半に
ノルウェー南部の
テレマルク (Telemark) 地方を中心に発展した、現代
スキーの原型とも言えるスタイルである。
後にスイスの急峻な山岳で進化したアルペンスキーはレジャーや競技としての地位を築き、クロスカントリースキーとジャンプスキーも競技として一般化した。ところがテレマークスキーはそれらの陰に隠れ、一時期は忘れ去られる存在となってしまう。再び世に出るのは1970年代になってからで、クロスカントリースキーの流行とともに、アメリカに於いてクロスカントリー用の板で斜面を滑降する技術として復活することになる。
現在では、
冬季オリンピック競技のクロスカントリーや
ノルディックコンバインド(複合)で有名なノルディックスキーの一種もしく別名として使われることが多い。リレハンメルオリンピックの開会式で、その存在を改めて世界中に知らしめた。テレマークスキーヤーはテレマーカーとも呼ばれ、徐々にではあるがその数を増やしつつある。
テレマークスキーには二つの意味があり、上に述べたスキースタイルとスキー用具両方であるが、スタイルは用具と密接に関わっているため、テレマークスキー用具の特徴とそれによって決まってくるスキースタイルについて説明する。
◆ テレマークスキーのスタイル
アルペンスキーがスキー板にブーツを完全に固定するのに対して、テレマークスキーはスキー板にブーツのつま先(コバ)だけを固定し、踵を浮かす事ができるのが最大の特徴である。
すなわち、ブーツの固定力で身体の動きを制限し、滑降時の安定性のみを追求しているアルペンスキーと異なり、身体の自由度を犠牲にせず、歩きや登りなどいろいろな状況にも対応するのがテレマークスキーである。もちろん自由度の代償として滑降には安定さを欠き、筋力と高度な技術が要求される。最たるものはそのターン技術で、アルペンスキーのそれとはまったく異なっており、外見上も一目で見分けが付く。ターンに際し安定を得るため足を前後に開き、ターン外側の足を前に出して足裏全体で加重。内側の足は後ろに引き、踵を上げて拇指球(親指の付け根)で加重するという独特な形をとる。この滑り方、技術(テレマークターン)が狭義のテレマークスキーである。
テレマークスキーは、主に
山岳スキーで採用されやすいスタイルである。アルペンスキーにも踵を解放して歩けるようにしている用具があるが、テレマークスキーは用具がシンプルかつ軽量で、ブーツの柔らかさも相まって歩きやすいため、難度の高い斜面を含むコース以外では好まれている。
以前は皮革製ブーツの全盛期であり、ブーツの柔らかさからあまりハードな滑りはできず、ゆったりとした優雅な滑りがテレマークスキーの醍醐味とされてきた。しかし最近ではプラスチックブーツや
カービングスキーに代表される用具の進化、大量の熟練アルペンスキーヤーの流入もあって、滑りはよりアグレッシブなものになり、高速化も著しい。山だけではなくゲレンデでも姿をよく見かけるようになり、中には
モーグルバーンの滑降や、エアー、
レールを楽しむテレマーカーも出現している。
◆ テレマークスキー用具
まず、踵を浮かせるために、テレマークブーツには一般の靴と同様に拇指球付近で屈曲することが求められる。プラスチックブーツでその問題をクリアすることは困難で、結果として登山靴に近く歩きやすい皮革製のブーツが長年にわたって用いられていた。しかし1993年、それまで皮革製テレマークブーツを生産していたイタリアのスカルパ (SCARPA) 社が、独自の屈曲構造を採用した世界初のプラスチック製テレマークブーツ、ターミネーターを発売。同じく老舗のガルモント (GARMONT) やクリスピー (CRISPI) も追随し、改良を重ねて完成度が高まってからはプラスチックブーツが主流となった。滑り主体の深く剛性が高いモデルから、歩き主体の浅く柔らかいモデルまで多数のバリエーションが出揃い、革靴は少数派となりつつある。
テレマークブーツの一目で分かる特徴として、ビンディング取り付けのためコバが長く前方に突き出ている事と、プラスチックブーツの場合屈曲可能にするため甲の部分を蛇腹状にしている事がある。
板も以前はアルペンスキーと明らかに異なり、細長く軽量な板が主流であった。しかし近年のプラスチックブーツの普及により滑りが高速化。板にも高い剛性やターン性能が求められるようになり、加えてテレマークレースのスキー幅規定撤廃(後述)もあって、短く幅広のカービング板が主流になりつつある。よって板だけを見ればアルペンスキーとの差はなくなってきており、レース用や新雪滑降用などではアルペン・テレマーク兼用のスキー板も発売されている。また、
サロモンなどアルペン専業だったメーカーのテレマーク参入も続いている。
そのような板とブーツとの間を取り持つ
ビンディングは、アルミやステンレスの板を曲げただけのような軽量で非常にシンプルな構造である。ビンディングから出ている3本のピンを靴底にある3カ所の穴に合わせ、コバの部分を上からクリップのように挟んで固定するだけの3ピン式と、コバをビンディング本体に差し込み、靴の周りを一周するケーブルで固定するケーブル式に分けられ、高剛性化しながらもスキー発祥時のスタイルを保ち続けている。最近では固定するケーブルを靴底側に配置したり、アルペンスキーのようにステップインで装着できたりするモデルも登場している。また、転倒時の負傷防止のためにセフティ(解放機構)を装備したモデルもあるが、かなりの重量増になる上、そもそもつま先しか固定しないテレマークスキーでは転倒時でも大きな怪我につながることは少ないので、レースでの使用(装着必須)が主である。セフティに限らず、便利でも構造の複雑なビンディングはそれだけ故障のリスクも高く、トラブルが
遭難につながりかねない山岳スキーでは敬遠される傾向が強い。
登行時には、クライミングスキン(一般に
シールと呼ばれる)という毛羽だったテープ状のものをスキー板の底面に貼り付け、後方に滑らないようにする。シールはその名の通り
アザラシの毛皮でできており、前方へは極めて滑らかに滑走できるが後方へは強い抵抗を発生する。ただし現在では非常に入手困難になり、代用品として登場した
モヘヤ(アンゴラ山羊の毛)や、ナイロンなどの
合成樹脂による製品が主流になっている。また、起伏の少ないルート用として、底面にうろこ状のギザギザ模様(ステップソール)が刻まれ、シールを装着しなくとも後方に滑らないように加工したスキーもある。
ストックも山岳用になると独特の機能を持っている。雪面や状況に応じて長さが変えられ、いざという時には左右を繋げてゾンデ棒やテントのポールとしても使用できたり、滑落対策としてグリップ部にピッケルを装着できたりするモデルもある。また、ほとんどは深雪でも埋まらないように大きいリングを装着している。もっとも、ゲレンデでは安価で軽量なアルペンスキー用を使っているケースも多い。
このように用具はアルペンスキーとかなり異なるため、一般的なスキー用品店やスポーツ用品量販店でテレマークスキー用品を扱っている店舗は非常に少なく、登山用品店やテレマークスキー専門店でしか購入できない場合が多い。
一方、同じ踵が浮くスキーでも、クロスカントリースキーはより細く軽いものに進化し、スキージャンプは滑走時の加速と飛行時の揚力確保のためにスキー板は非常に長く幅広いものに進化してきたので、双方ともテレマークスキーとは大きく異なるものとなっている。また、双方ともターンの必要はないので板にエッジはなく、サイドカーブもつけられていない。
◆ 最近の傾向
現在のブーツとビンディングは75mmノルディックノルム(ブーツのコバ先端幅が75mm)という規格に則っているが、次世代規格であるNTN(New Telemark Norm)が発表され、対応ブーツ、ビンディングが発売された。ただ、テレマークスキー用具はアルペンスキーなどに比べるとまだまだ熟成不足の感は否めず、新機構を搭載したもののすぐさま問題点が発覚して
リコールになったり、不評で短期間のうちに生産中止に追い込まれたりといったことを繰り返しているのが現状である。よって、新製品はしばらく様子を見るべきだという意見も多い。NTNシステムは現在のところ高価かつ重量も重く、発売後の成り行きが注目される。
また、NTNの登場や前述のように現在のテレマークスキー用具は非常に進化を遂げたが、最近では革靴時代からのベテランテレマーカーを中心に原点回帰の動きがあるのも事実である。
そもそもテレマークターンという技術は不安定なテレマークスキーで安定を得るためのものであり、わざわざテレマーク姿勢をとらなくとも容易にターンができてしまうほど安定性に優れた最新のテレマーク用具では意味がなくなってきている。また、革靴の時代とは比較にならない位に用具は複雑かつ重くなり、テレマークスキーの売りであった軽快さも失われつつある。そこで、革靴(もしくは浅いプラスチックブーツ)+3ピン式ビンディング+細板といった組み合わせを好んで使うテレマーカーが僅かながら増えており、雑誌などでも特集が組まれている。
◆ 競技
国内では、日本テレマークスキー協会(TAJ)公認の競技が行われている。
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